masalabayashi's diary

好きな言葉は「名盤」です

今年よく聴いたアルバムズ 2023

日々は止めどなく過ぎていく。ので、何かに今を残しておかねば2度と振り返ることは叶わない。そう考え、ちょうど9年振りにブログを書くことにした。

本当は開高健のように新鮮、鋭利、芳満な文章を書きたいが、人には向き不向きがある。

自分に書けることとして、ちょうど年末なので今年よく聴いたアルバム10枚を並べることにしよう。

 

 

Koichi Sugii「Japanese Jazz & Salon Music, 1936-1941, Vol. 1」

「ニッポン・スウィングタイム」に杉井幸一のことが載っていて、聴いてみたらどハマりした。
日本の民謡をJazzに仕上げるというアイデアはシンプルゆえに早い者勝ちだと思うが、この時代にして早くも決定版が生み出されてしまった。サロン・ミュージックというジャンルを教えてくれた一枚。

 

②Adi oasis「Bad bitch summer mix」

2023年夏に突如リリースされた謎のアルバム。いくら調べても何の情報も得られなかった。アレサ・フランクリン、グレース・ジョンソン、エリカ・バドゥから、今をときめくYazmin Lacey、Lady Wray、Szaらの楽曲がDJスタイルで繋がれた企画盤で、非常に耳心地が良い。何か知ってる人がいたら教えて下さい。

https://music.apple.com/jp/album/bad-bitch-summer-mix-dj-mix/1693901733

 

服部良一「僕の音楽人生(コロムビア編)」

杉井幸一と同じく、「ニッポン・スウィングタイム」で知りよく聴いた。
ブルース、バンジョー、ブギウギなど様々なジャンルの音楽が含まれていて面白く、何といってもジャズが格別。
朝ドラでこの時代の音楽を聴けるのは嬉しい。

 

④Henri Salvador「Triple Best Of Henri Salvador」

友達に教えてもらい沢山聴いた。真っ白なシャツが良く似合う人だ。
フランス語なので全く分からず気が散らないのが良い。ただし、歌詞を見ても何も分からないのが少し寂しい。
Apple musicに日本語訳を同時表示する機能があれば良いのに…
3曲目の「Count Basie (Lil' Darlin')」には魔法がかかっている。

 

高橋幸宏「Blue Moon Blue」

これまでは全く聴いていなかったが、訃報に接し聴いてみると非常に好みのライン。ファンになった。オシャレな逸話が多く、その佇まいからは強烈な美意識と審美眼を感じた。「美意識の高い人はそれゆえ日常生活を送るのが大変そう」と思うに至るきっかけとなった。
2曲目「Blue moon blue」はあまりに素晴らしく、それゆえ幸宏さんがもういない事実がリアリズムを伴って感じられ、あやうく涙が溢れそうになった。

 

⑥Adi Oasis「Lotus Glow」

宇多田ヒカルの「Badモード」を聴いていなければ聴けなかったジャンルだと思う。
2曲目「Get it Got it」から3曲目「Serena」の繋ぎがお気に入り。
2018年の「Adeline」と同じくジャケの背景色が綺麗で、Adi Oasis本人の魅力を引き出している。
ネオソウルにカテゴライズされるようだが、個人的にはベースラインのダブっぽさが印象に残っている。

 

David Bowie「Hunky Dory」

デヴィッドボウイには何か奇抜なイメージを持っていたが、幸宏さんの生き様に触れることで、確固たる美意識を貫いたアーティストという印象に変化した。
静かな始まりから次第にボーカルを重ねていき、サビでは多くの楽器がかき鳴らされる曲構成は、一曲を物語として捉えているように感じられる。
特に1,2曲目の流れを聴きたくて再生ボタンに手が伸びた。

 

坂本龍一「Sweet Revenge」

今年は酷い一年だったが、ミュージシャンの訃報が続いたことも気が滅入る一因である。
今年4月から過去作を幾つか聴いた中で、本作は一番のお気に入りになった。生前の記事には女性絡みのものが多い教授は、本作でも女性ボーカルとのコラボが多く、女性に対し何か特別な美を感じていたのかと考える。

 

⑨青葉市子「Ichiko Aoba with 12 Ensemble (Live at Milton Court)」

京都のfm放送の番組「flag radio」をよく聞いているが、青葉市子の回は音楽が沢山流れるので嬉しい。語り口も穏やかで、梅林太郎先生の選曲も毎回素晴らしくありがたい。折坂悠太と隔月で担当する水曜日のコンビが長く続くことを願う。
本作はジャケットのとおり、まるでどこか遠くで催されているコンサートの音が漏れ聞こえてくるよう。耳を澄ませたくなる音響バランスに仕上がっている。

 

David BowieHeroes

なんといってもエゴン・シーレを模したとされるジャケットが素晴らしい。
自分で真似して気づいたが、左手をだいぶ内側に向けないとあのような写り方にはならない。首の角度も難しく、非常に計算された一枚である。妻とともに真似したのは愉快な思い出となった。
アルバムは一曲目の「Beauty and the Beast」のゴキゲンなミステリアス具合が大好きで、一時期は毎日のように聴いていた。

平井堅の牙城

平井堅には苦い思い出がある。

中学のときに衝撃的な曲がオリコンチャートを賑わせた。
曲名はそう、Strawberry Sexである。
学校でその曲の話をする男子はニヤニヤし女子は盛り上がる。
ポルノグラフィティ」以来、二隻目のスケベ黒船が我が中学校へ上陸したのであった。

小学校を卒業して中学生になると行動範囲が広がる。
以前は徒歩圏内で遊んでいた小学生が、バスに乗って街へ出る。
ある日の僕も友達とバスで5停留所先の街へ向かった。
その日は「カラオケ」という大人の遊び場にデビューする日だった。
歌う曲は決めていた。大人の遊び場にはこれしかない。Strawberry Sexである。

中学生特有の、一生懸命歌うのはダサく恥ずべきこととの思い込みにも負けず、僕は歌った。
しかし出ないのである。サビの高音が。 
あんなにおちゃらけた曲を歌う平井堅は、実はとても上手なシンガーだった。
平井堅の高すぎる牙城を前に、僕は涙目で「演奏中止」のボタンを押した。
友達も僕に気を使ってか「難しそうだったね」などと声をかけてくれる。
やめてくれ!いっそ笑い飛ばすか殺してくれ!

僕はイチゴのように顔を赤くしてうつむいていた。


歌手は歌が上手い。
そんな当たり前のことを初めて教えてくれたのは平井堅であり、Strawberry Sexであった。
この曲を聴くたびに苦い思い出が胸をチクリと刺すが、それはさておきとても良い曲だと思う。

 


STRAWBERRY SEX - YouTube

今週聴いた音楽ズ 第二回洋楽編 Mayer Hawthorne 「How Do You Do」

前回に引き続き第二回です。

もはや「今週」ではなくなってしまいましたが、細かい事は気にしません。今日はコレ!

 

ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ

ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ

 

  遠足前夜に聴き込んで、なんなら遠足中も聴き続けたいアルバムです。スヌープ・ドッグがラップではなくボーカルとして参加しています。

 

坂本慎太郎との相互カバーによって私の中で話題沸騰のメイヤー・ホーソーン。以下、視聴リンクです。http://blogs.timeout.jp/ja/blog/2014/03/25/%E5%9D%82%E6%9C%AC%E6%85%8E%E5%A4%AA%E9%83%8E%E3%81%A8%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88/

 

 インディーズから出した1stに続く、メジャーデビュー作となる2nd。2011年の作品です。第一印象は「近頃の黒人がやらなくなった音楽」。私は現在のブラック・ミュージックを聴きません。シーンの移り変わりの結果、あまり好みではない時代が来てしまいました。

最近ではかつてのソウル・ミュージックが消えた気がします。特にモータウン系のスウィートソウル(甘茶ソウル?)はほとんどがR&Bに取って代わられ、クールを求める若者はHip Hopに流れてしまったような印象を受けます。ブラックミュージックのスウィートなところに惹かれる私は、密かにささやかにこの現状を憂いていました。「あれだけの遺産を放り出すの!?まだやれることあるでしょ!」的な憂いです。モータウンによって一世を風靡したソウルはもはや風前の灯火。金と快楽を匂わすR&Bと、尖ったHip Hopの全盛期地獄に私は生きていると思っていました。

 

本作はこの現状を打破しうる一枚だと、私は本気で信じています。それだけの説得力がこの一枚にはありました。音楽家の父を持ち、モータウンなどを聴きながら育ったメイヤー・ホーソーン。DJ ヘア・カット名義でHip Hop に傾倒したメイヤー・ホーソーン。彼が歌うモータウン直系の5、7、11などは、今の黒人がやらなくなった、ポップで甘ったるい最高のソウルでした。またおそらくポップスに属するであろうその他の楽曲群も過去の黄金時代のテイストを残している気がします。サックスやホルンの使い方、バックコーラスの頑張り方から感じました。

 

アルバム全体を通じてメロディーメイカーとしての才能が輝いています。サビではない何気ないフレーズのメロディーにも気が利いており、聴いていてニヤニヤしてしまいます。その中でも異質な1は、確かに坂本慎太郎との近さを感じさせました。ストリングスとベースのバランス、気怠いサビがもたらす高揚感は本曲も坂本慎太郎のカバーではないかと思わせるほど。グッド・メロディーを書くミュージシャンは少なからずいるものの、これだけ特殊に心地良い曲を書くミュージシャンは本当に少ないと思います。その点でもこの曲の持つ意味は大きいのでは。

 

ちなみに私のお気に入りフレーズは10。「You called me just to tell me you love me. And everything was alright.」お気楽で最高!

 

1. Get to know you


Get to know you - Mayer Hawthorne - YouTube

 

10 You called me


Mayer Hawthorne - You Called Me (NEW) - YouTube

 

いやあ、聴けば聴くほどに良いアルバムだなぁ。これまた名盤です。特にリアルタイムのアーティストであることが嬉しい!1stと3rdも聴いてみよっと!

 

以上、終わってしまったプレミアリーグに思いを馳せながら書いたブログでした。アーセナルは終盤に失速して結局いつもの4位となりましたが、来年こそは。

 

 

今週聴いた音楽ズ 第二回洋楽編 Tom Waits 「Closing Time」

 

私が最近書く文章には余白が求められない。100人が読むと100人が同じイメージを抱き、理解する。そのような文章が求められ、私も目指しているところがある。でも、それじゃあまりにつまんねーだろってなことで、たまには自由にブログを書こうと思う。

 

ではでは今週聴いた洋楽を気に入った順に、偏見まみれでレビューしていきます!

 

 

Closing Time

Closing Time

 

 

「酔いどれ詩人」トム・ウェイツ。酔いどれ詩人、こんなに素敵な職業は無いでしょう!俳優に転身する以前に発売された今作は、1973年のデビュー作。ちなみにトッド・ラングレンの2ndにジャケットが似ている。

Runt. The Ballad of

 

 

あまり期待せずに借りたが、とんでもなく良かった。それだけでなく早くも個人的に特別な1枚となった。

 数年前から孤独との向き合い方を考えていた。誰かと会って孤独を紛らわすことも大切だが、自分一人でとことん孤独と向き合うことも大切なのではないだろうか。音楽を聴きながらでも、映画を観ながらでも、釣竿を出しながらでも良い。その瞬間に一人であることを受け止めて突き詰めてみる。それは孤独から逃げ回るよりもよっぽど苦しく、為になるのではないか。そんな事をうっすら考えていたものの、私はそれを後回しにしていた。一人で音楽を聴いても、映画を観ても、ブログを書いても、何かから逃避しているような感覚をどこかで抱いていた。

 

春になった。周囲や自分の状況が変わった。いい加減に孤独と向き合おうと思った、そんな矢先に本作と出会った。聴くとトム・ウェイツの声は優しく、メロディーはどこか寂しい。ああ、きっとトム・ウェイツは孤独だ。そして孤独を受け止め、うまく付き合えているのだ。そんな印象を受けた。この音楽を一人で聴いていると、自らが完全に孤独であることをトム・ウェイツは教えてくれる。それも悪くないと語り掛けてくれる。その懐の深さが本作を特別にしていると思った。孤独に涙ぐみながら。私がソロ・シンガーに惹かれる理由は、きっと歌い手と聴き手の一対一の関係が好きなのだろう。

 

名曲が多すぎて好きな曲は挙げきれないが、特に 7「Rosie」と 11「Grapefruit Moon」が好きだ。7は InterFMで耳にしたから、11は大橋トリオのカバーアルバムに入っていたからかもしれない。もちろんそれを差し引いてもとても美しい2曲だと思う。名盤。

 


Tom Waits - Rosie (Closing Time) - YouTube

 


Tom Waits - Grapefruit Moon - YouTube 

 

 

以上、トム・ウェイツのレビューでした。レビューというよりほとんど私の感想に終始しましたが、全く悔いはありません!泣 

 

それでは今日はこの辺で、さようなら。

今週聴いた音楽ズ 邦楽編

 

洋楽編に引き続き、邦楽編です。

これからは好きな順番に並べていきます。

 

 

Fine

Fine

 

 今春の解散ライブ迄にはベストとTenしか聴いたことが無かったが、その後 1st, 3rd を聴いた。 本作は私にとって4枚目であり、またキリンジにとっても4枚目のアルバム。

 第一印象は、堅い。キリンジらしく隙を見せない作品である。軽快なテンポの曲を厳しい演奏で引き締めている。その堅さから1周目はあまり好みでなかったが、耳にメロディーが馴染む2周目以降は気がつけば好きになっていた。ちなみに、調べてみると2曲目「雨は毛布のように」にはコーラスでaikoが参加している事が分かった。へぇー!

キリンジを語るときによく言われる「お兄ちゃんと弟くんのどちらが好きか。」本作では泰行さんが4曲、高樹さんが7曲の作曲を担当している。シンプルな音楽が好きな私には、どちらかというと弟さんの楽曲の方があっているように感じる。そこも含めて本作は非常に気持ちよく聴けました。嗚呼、名盤!

  

 

「てん、」

「てん、」

 

  やっぱり好きなクラムボン。唯一聴きそびれていた本作は、個人的名盤「Imagination」に続く6th。全体的に1曲の時間が長くなったが、それにもかかわらず1つの音にかける拘りは強くなっている印象を受ける。音の引き算、拍の正確性にそれが表れていると思う。

クラムボンのどこが好きか。おそらく、バンドの変遷であろう。ポップでキャッチーな青山系の1stや2ndから始まったバンドサウンドは、4th辺りから音響系へとシフトした。ちょうど私が音響系を聴き始めた頃に出逢えたので、ポピュラリティを残した音響系は非常に聴きやすかった。

その後もクラムボンは面白い音を積極的に取り入れている。レコーディングに関して私は全く何の知識も持たないが、相当な拘りを持つスタジオミュージシャンだろう。(もちろんライブも素晴らしい!)

本作の歌詞カードを見ていると、ドラムの伊藤大助さんの楽器に“udo”と書いてあった。まさか野菜!?と思って調べると、アラブ音楽で用いられる弦楽器らしい。そういえば、circle '12 という野外フェスにソロで来ていた原田郁子さんがそんな楽器奏者と共演していた気がする。あやふやだけど。

面白そうな楽器を取り入れてみて音楽の幅を広げようとする姿勢にはとても共感できるし、それを作品として纏め上げる力量には恐れ入る。それでいていつまでも変わらない愛くるしさを持つたぁ、クラムボンっちゅうのは本当にスケールの大きなバンドですね。

 

 

とげまる

とげまる

 

 

 スピッツである。スピッツはベストと1stしか聴いたことが無かったが、まるで魔法がかかったようなメロディーが印象的で好きなバンドである。

ポップソングは3分半ばが丁度良いという話を聞いたことがある。それ以上は冗長になってしまうと。本作は4分未満の曲が多く、もう少し聴いていたい気になるが、その僅かな物足りなさがポップソングの最大の魅力だろう。私は「捨て曲が無い」という表現を褒め言葉には思えないが、確かにそんな言葉が似合う良いアルバムだと思う。

 

あさげ - selected re-mix & re-arrangement works / 1

あさげ - selected re-mix & re-arrangement works / 1

 

  一昨年に急逝したharakamiさん。耳触りの良い独特な音が組み合わさり、まるで音が湧き出るような印象を受ける。Remixアルバムである本作は、なにより選曲が素晴らしい。素晴らしい原曲たちは完全にharakamiサウンドになり、新たな聴き応えを提供してくれる。エレクトロサウンドには感情の入り込む余地があまり無いため苦手だが、本作ほど歌があると聴きやすくて嬉しい。一時期感情を入れ込みまくった4「ばらの花」も、熱量こそ変わったが根本的な部分は変わらず、素直に好きだ。

ASA-CHANG&巡礼の音源を初めて手に入れた。彼らの「花」の歌部分を最初に聴いたとき、確かに気味の悪さがあった。おーこわ。しかし、印象に捉われずにしっかり聴くと、u-zhaanが奏でるタブラのリズムであったり、ただただ美しいストリングスが強烈に聴こえてきた。気味の悪さだけで敬遠するのは余りに勿体無い作品は音楽に限らず数多くあるが、彼らの音楽もその一種だろう。

そのような音楽の良さを丁寧に汲み取った本作は、あれ、聴けば聴くほど好きになっていくぞ…

 

  

小さな生き物

小さな生き物

 

  

またもスピッツである。今年の9月発売の新譜らしい。

しかし、変わらない。音も展開も、私の貧弱な耳では前作や以前からの変化を感じ取れない。前述のクラムボンとは正反対である。

変わることが良いとは言わない。ころころスタンスを変えるよりも、変わらないことの方がずっと難しいし、苦しいだろう。しかしそれ程まで音楽性を変えない理由はあるのだろうか。いつまでも変わらないことは、音楽を追求することを放棄した末の惰性とも受け取れるのではないか。

そんなことを考えていたが何度か本作を聴いて考えが変わった。スピッツは楽曲はポップであるがロックバンドなのだ。ロックバンドが変わらない事は意地かもしれないし、信念かもしれないし、私には分からない。ただ男が走ると決めた以上、周囲に出来ることはその背中を見守る事だけなのです。いやマジで。

  

 

以上、邦楽編でした。クラブW杯でゴールを決め、レッドカードで去って行くロナウジーニョを尻目に書いた、邦楽編でした。

 

今週聴いた音楽ズ 洋楽編

 

先週、久々にCDを爆借りした。その全てのCDの記録とレビューまがいの文章を書こうと思う。目的は音楽体験の共有、そしてより深い音楽への理解。そんなことが出来るのかは分からないが、少なくともやってみない限りは永久に分からないだろう。

 

 

アルゾ

アルゾ

 

 今回借りたCDの中で良い意味での最大の驚き。ソフトロックのようなグッド・メロディーと、美しいハーモニーを聴かせてくれる。

オリジナルは1971年。ニュージャージーに生まれた"ALZO"は、幼いころからラジオから流れるポップスを聴きながら育った。その後ジャズに傾倒し、ジャジーな雰囲気と(なぜか)ブラジルのソウルを備えた本作がレコーディングされた。メロディーはポップだが、キーボードやストリングスの使い方がマルコス・ヴァーリの初期に近い印象を受ける。

 余談だが、本作をよく流していた四ツ谷のロック喫茶でのちにシュガー・ベイブが誕生したそう。そう言われれば…そんな気も…

 

 

Back to Black

Back to Black

 

  Amy Winehouse、聴いてみた。

きっかけは、少し前に1曲目の"Rehab"を久しぶりに、本当に久しぶりに耳にしたこと。たしか高校生の時に流行っていたが、その当時と違ってとても享楽的に聴こえた。もしくは以前から十分に享楽的だったはずの本アルバムを、十代の私は「自らのスタンスから外れる」という理由で否定していたのだろう。猛省。

 楽曲は非常に洗練されている。過去のジャズ・シンガーへのリスペクトがマジに感じられるクールで野太い歌声も心地よい。思っていた以上にちゃんとしたアルバムだ。息を長く吐きながら紡ぐ歌声が、静かに部屋を満たしてくれる。

 

ブラジリアン・ソウル

ブラジリアン・ソウル

 

 音作り、そして囁くような歌唱法はまさしくブラジル音楽。決して焦ることなく弾かれるキーボードが心地よい。

借りたきっかけは、TSUTAYAのちょうど良い場所にフュージョンコーナーがあり、ちょうど良い位置にこのCDが置かれていたから。ナイスなジャケの本作には、やっぱりちょうど良い音楽が詰まっています。

 

ラテン・ヴィレッジ(紙ジャケット仕様)

ラテン・ヴィレッジ(紙ジャケット仕様)

 

 一部から熱狂的な支持を受けそうなジャケの本作。個人的にはあまり好みではないが、何事も経験だろう。借りてみた。

またも強烈なブラジリアンテイストが。Azymuthに比べるとよりラウンジミュージックに近い気がする。演奏にはほどほどの温度が保たれており、和やかに聴ける反面ポケーッと聴き流してしまいそうになる。たった28分だが今回は聴き流してしまいました。ブラジルワールドカップ前にまた聴き直そう。

 

 

Wingspan

Wingspan

 

 ポール御大による、Paul McCartney & Wings のベスト。恥ずかしながらビートルズ以降のポールを全く聞いたことが無かった私は、来日の際のこの記事からポールに興味を持った。

 

ポールが来日中に愛妻へ送っていた“サプライズ生ライブ”(女性自身) - Y!ニュース http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131129-00010005-jisin-ent

 

愛だなぁ…いいなぁポール…

内容は、素晴らしいポップソングが纏められた素晴らしいアルバム。中でも"Band On The Run"の転調と、シング・アロング感は文句なしにサイコー。

下手なりに口笛を吹くことが大好きな私は、あることに気が付きましたね。それは、「Aメロを口笛で吹いてもぜんっぜん良くない!」それなのに、サビも含めた曲の纏まりは何なのでしょう。ただただ不思議です。

 

 

There Goes Rhymin Simon

There Goes Rhymin Simon

 

  "Graceland"、"Rhythm of the Saints" など個人的に大好きなアルバムを出している大好きなPaul Simon。それら2枚の刺激的なアルバムに比べると、落ち着いたアルバムに仕上がっている。Simon & Garfunkel 解散後の2作目らしい。長く聴き続けていくときっとより深く味わえるアルバムだろう。ゆっくり時間をかけて聴いていこう。如何せん Paul Simon の書く詩とメロディーは優しすぎて、私の人生からは外せない。

 

Sound Sun Pleasure

Sound Sun Pleasure

 

 自称、土星からやってきたジャズピアニスト/シンセサイザー奏者、サン・ラ。なんかの映画で使われていた曲に興味をもって借りてみることに。前情報を入れずにジャケだけで借りようとしたところ、あまりにも全アルバムのジャケがぶっ飛びすぎていて、あえなく断念。結局いちばんシンプルなタイトルの本作を借りることに。

 発言や外見からイロモノ扱いしていたが、聞いてみるとその上品さに打ちのめされた。決して多すぎることのない各楽器の音数と、ゆるやかなテンポ。私が聴きたかった音楽はこれかもしれない、そんなことを思いました。

 

Runt

Runt

 

  偉大なトッドの1stアルバム。21歳で音楽プロデューサーとなったトッドの優しくて切ないメロディーをこの時から聴くことができる。ベストと2ndとUtopiaのLive盤しか聴いたことがないので、これから聴き漁ろう。ちなみにベストは超サイコーでした。

 

 

Best of the Weather Report

Best of the Weather Report

 

 ライナーノーツではすごーく絶賛されてたけど、正直あまり良く分かりませんでした。実験音楽は、正しい音楽の素養が無いと理解できないのでしょう…

 

以上で洋楽編は終わりです。つ、つかれた…! 

 

 

よーいのどんで

だんだん分かってきたことがある。それは、歳をとればとるほど「皆で一斉に何かを始める」機会が失われていく、ということ。一斉に義務教育が始まり、皆が同じ服を着て同じ時間に集まり、同じ事をし始めてきた。ムムム、どうやら現代の集団行動は教育と密接な関係がありそうだ。

ともかくそんな時代は遠くに過ぎ去り、皆が思い思いのことをして過ごすような年代になった。人生におけるフリーダムステージ。きっと死ぬまで続くのだろう。このステージはとても自由である一方、どこかもの寂しい。皆で一斉に何かを始める喜びや楽しさのようなものを僕は感じていて、それはある種の洗脳的思考ではあるが、まあ要するに、みんなでワイワイやるのは楽しいよねってことなのよね。で、どうせワイワイするならせっかくだから始めからみんなでワイワイしちゃおうよ、ってことでもあるのよね。集団が何かの目的に向かい始めるのは(恐ろしいこともあるけど)楽しい。最近そんなことないなぁ、と思っていたら、今日のお昼に入った天ぷら屋さんで、釣りバカに出てきそうなOL三人組やオッサン達と、僕が圧倒的に早く注文したのに結局同時に揚がった天ぷらを、皆で一緒に、そりゃもうみんな一斉に、食べました。